2013/03/15

同窓会報の原稿(2)

続いて、小林くんの作品(1,009字)です。

その朝は、千種駅から歩くと決めていた。高校は自転車通学だったので、駅からのこの道を歩くのは何年ぶりだろう。拡張された道路や地下鉄の入り口、新しい町並みと、30年間、時が止まったような裏路地との間を歩く、15分ほどの道のり。学校の正門に着くと、明照殿と事務棟以外あまりの変貌ぶりに驚いた。朝日ただ射す東海の、我が学舎も今はなし。建物のなかったところに新校舎が建ち並び、かつて校舎だったところは、グラウンドや駐車場に。それでも築後80年に余る講堂は、今なおその偉容と懐かしさをとどめ、私を迎え入れてくれた。オーケストラ部の華やかな演奏が流れる会場には、既に、卒業生のご両親が何組も入っていったが、3階のOB席ではダントツの一番乗りだった。しばらくして、受付を済ませた先輩方や同期がちらほら入場し始め、慌てて受付をしに、正門まで戻る。途中、すれ違う懐かしい顔ぶれに胸がはずむ。やや冗長に書いたが、卒業式が始まる前でも、これだけ楽しめる、ということを知っていただきたかった。
卒業式を中心とした当日の出来事については、同期森君の達者な報告に譲るとして、もう少しだけ雑感を述べたい。
何年経っても自然と口ずさめる月影、校歌。先輩への風刺と尊敬のこもる送辞と、自虐的なまでに自分たちを肴にしつつも、恩師や家族への感謝、新しい一歩を踏み出す期待と不安、そして最上級生としての気概と風格に満ちた答辞。式中のヤジや騒乱にも動ぜず沈黙と間合いで制する先生方と、「空気を読める」若者たち。変わるところは変わり、変わらぬものは変わらない、誇りにさえ思う個性的で自由な空気。この学校でかけがえのない時を過ごした者同士だからこそ共感できるものがある。
OBを同窓会に招待するこのイベントは、堀田名誉学園長が、慶応大学での招待イベントにヒントを得て、導入されたという。その堀田先生から「東海の校歌は二番の歌詞がいい、という人が多いが、実は一番にこそ、人生の意味が謳われている」という話も披露された。先生からすれば、齢50前ではまだ解らないとのことであろう。20年後にもまだ悟っていない可能性が高いが、それを確かめるためにも、この地へ来なければ、と思う。
これから卒業50年・30年を迎えられるOB諸兄には、是非とも参加されることをお勧めします。末筆ながら、ご招待して下さった学園・同窓会関係各位に心から御礼申し上げます。そして、卒業生諸君、ご卒業おめでとう!

0 件のコメント:

コメントを投稿